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ahoaho
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白と黒さばかりを耐え忍んだ空が、そろそろと細かい粒を
降らせそうだ。

境内に寝そべっていた犬が、くんくんと鼻をならして空を見上げた。
ちん、と、すぐそばにあった彼のアルミの容器にしずくが滴った。

花は、しとしとと濡れて頭を垂れたまま、飾られながらも俯く。
生者から死者への手向けの花だ。
その向こうには、磨かれた御影石が鎮座していた。



17歳になっていた。


3つ年上のラビは、もはやこの場所にはいない。
自分のしでかした罪を全て償うまでは、彼には会わないと決めた。

海の向こうの、どこか広い大陸ででも、きっと彼はのんびりと
自分のペースを決め込んで生活しているに違いないと、
アレンは目を伏せて口元を動かした。




あの惨状からも、絵は描き続けていた。
震えるけれど、自分らしく柔らかな絵を描いていた。
まどろむような塗り方だと彼に指摘される。

自分でもそう思っていた。

自分の絵は境界線がいつも曖昧で、輪郭がはっきりしておらず、
溶け出すように拡散してしまいそうな塗り方になる。

アレンそのものだな とラビは辛辣に笑った。

絵はその人の本性を現す。うまい、ヘタではなく、どの方向性に
向かったとしてもその人間性があらわれるらしい。
いくつもの選択肢の中から、自分がその手法を選んでいった過程も
含まれる。
選択するのは自分だ。そこに人生が凝縮されている。

「ボクの凝縮された15年間は、こうもまどろむような、
・・・半分眠り続けたという結果か」

「それでもオレは好きだけれどな」


天使がどんぐりを拾っている絵だ。

輪郭や伝える力は曖昧だ。
どうして天使がどんぐりを拾っているのか。
その理由を明確に述べる術もない。

「綺麗な絵だ」

ラビは薄い唇を伸ばしてにこっと笑った。

どんな価値もないのだろう。きっと、才気溢れる彼から見たとしたなら。
ばしゃん、と、筆をテレピン壺の中に投げ入れる。
跳ね返った油が、ラビの頬を汚した。

「アレン、乱暴なんだけど」

「よくわかりません。僕の中で、うまく形にならない」


頭の中を探りにいったりきたり、偶像が現れない。

描きたいものも曖昧で、どうしていきたいのかも曖昧で。
デッサンしか出来ない。なぞられた、あつらえられたものを
処理することしかできない。
ゼロのキャンバスから、線を引き伸ばしていく作業が、
こんなにも苦痛だとは思わなかった。

「あとは先輩にお任せします 合同作品なのでしょう。

・・・僕は、警察に行って来ますから」

死体遺棄、とのことで、警察にお世話になっていた。
未成年なのでゴタゴタし、想像していたとおり、面倒くさいこと
になっていた。

聴取をされる最中も、頭の中では、あの日のラビ先輩とのやりとりで
脳内が満たされていた。

蒸し暑い、夜。扇風機もない家屋。
壊れかけた冷蔵庫だけが軋む音と、虫の声と暗闇の奥に潜む不自然な
静寂が、僕を狂わせる。

暴かれた、禁断の木の実はどろどろになって腐っていた。
そののち乾いて、味わうことは二度とできない物体になっていった。






学校を辞めることは出来なかった。
ラビ先輩が、いたからだ。



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